高速スタートアップは無用の長物

パソコン・周辺機器

「高速スタートアップ」とは、Windows 8以降に搭載されるようになった機能で、OSの起動を高速化するためにシャットダウン時にメモリやCPUなどの状態を保存するもの。

どこかで聞いたことがある?そう、「休止状態」の際と同じような機能だ。休止状態同様にそのまま保存するわけではないが、ある程度のシステム情報をシャットダウン時に別途保存(ちなみに保存先はhiberfil.sys)することで、次回起動時にそのデータを読み込み、短時間で起動を完了させよう、というものだ。

Windows7以前、どんどんOSの機能が肥大化していく中で、ユーザーの頭を悩ませていたのがこの「起動にかかる時間」だ。筆者も、ひどい場合だとパソコンの電源を入れてからトイレに行って、帰ってきたらまだ完全には起動が終わっていなかった、といった記憶がある。聞くところによると5分ほどかかっていた、などの「被害者」も存在する。

これらの悩みを解決するために導入されたのが高速スタートアップで、「そもそも毎回バックグラウンドで起動しているようなアプリケーションは、シャットダウン後もずっと起動状態を保持すればよいのだ」という発想の元、用意されたのだろう。


令和の「高速スタートアップ」は不要

前述したように、起動時のイライラ・ストレスを解消するための「高速スタートアップ」だが、要は「起動が速くなる」、そのためだけの機能だ。

だがここ数年のドライブ事情は日進月歩で進化している。特にSSDの貢献は凄まじく、M.2規格になってからはHDDだった時代に比べ、倍どころではない速度で立ち上がる。「高速にスタート…」など気にするまでもなく、仕様として「速くなっている」のだ。

だがこの「高速スタートアップ」、現行のOSではデフォルトで「有効」になっている。「起動を速くする」だけの機能ということであれば別にどちらでもいい、有効でも無効でもいい、と思われるかもしれないが、大きな問題が残っている。

バックグラウンドで動いているアプリに不具合がある場合、そのまま不具合ごと保存してしまう

もうこれを読んだだけでその危うさが分かっていただけると思うが、どういうことか詳しく話してみよう。


「高速スタートアップ」の問題点(シャットダウン)

使用しているパソコンに不自然な挙動が発生した場合、まず対処法としてよく挙げられるのが「再起動」だ。簡単に言えば一度システムを終了させ、クリアな状態で再立ち上げをすることで不具合箇所を解消するための方法で、実際非常に有用な手段である。

ところがこの再起動の方法が曲者で、初心者の中には「実際に一度シャットダウンしてから電源ONにしたほうが、より深化した再起動になる?」と誤解している人がいるかもしれない。

実はこの「高速スタートアップ」の機能は、「シャットダウンからの起動時に有効」になり、「終了メニューの再起動」選択での起動時には無効になる、という特徴がある。

つまり、「再起動」を選択した場合は実際に一度リフレッシュされた状態で立ち上がるのに、電源を落とした状態からの再立ち上げだと一時保存データを読みにいってしまうのだ。これは実際に設定画面で示されている。(下記画像)

「再起動は影響を受けません」これはつまり、再起動時には高速スタートアップが働いていないことを示す。逆に言えば、シャットダウンからの起動の場合は一時保存を読み込みにいっているということだ。

もし不具合の原因がバックグラウンドで動いているアプリの場合、そのまま再び読み込まれてしまうため、全く改善しない。そして誤解は広がる。

電源を落としてもう一度起動しても、やっぱりおかしい!!

と。これはまさに高速スタートアップの悪い特徴だ。素直に「再起動」選択だと直るかもしれない不具合が、電源を落とす方法だと直らないなんて、もはや邪魔者でしかない。

その他にも、その一時的に保存されたデータのせいで

  • ネットワークトラブルが起きやすい
  • グラフィックトラブルが起きやすい
  • 更新プログラムがうまく適用できないことがある

といった「被害報告」がある。これではもう「ちょっと起動が速くなる」ことと引き換えに受け入れられるものではない。


「高速スタートアップ」を無効化する方法

くどいようだが、現在のSSD利用が標準近くとなったパソコン事情で、わざわざ「高速スタートアップ」を利用するメリットはほぼない。2秒~など、数秒の誤差があるかないか、程度ともいわれている。

その引き換えの不具合リスクのほうが明らかに問題なので、通常デフォルトで有効になっている「高速スタートアップ」についてはまず無効とすることを推奨する(なおWindowsの設定画面では「有効」が「推奨」になっている…)

①タスクバーの検索ボックスに「コントロール パネル」と入力し、検索結果から「コントロール パネル」を選択する。

②開いた「コントロールパネル」から「電源オプション」をクリックする。

ウィンドウの見た目が画像と違う場合は、右上の「表示方法」を「大きいアイコン」にする。

③「電源ボタンの動作を選択する」をクリックする。

④「現在利用可能ではない設定を変更します」をクリックする。

⑤「高速スタートアップを有効にする」のチェックを外し、「変更の保存」をクリックする。「推奨」の文字は見なかったことに。

この方法で簡単に「高速スタートアップ」を無効にできる。

なお、以前紹介した「休止状態を無効にする」の紹介で、コマンドプロントの設定で「hiberfil.sys」を削除する方法であれば、「休止状態」と「高速スタートアップ」をともに無効にすることができる。

これらの一連の操作を終えたら、一度「再起動」でOSをリフレッシュしてみよう。あなたのお使いのパソコンがWindow11である、というような最近購入の端末の場合、起動にかかる時間で以前とほとんど変わっていないことが実感できると思う。少なくとも、昔のように「5分かかる」といったことはないはずで、もしSSD使用でその時間がかかる場合はすでに致命的なエラーが別にあるはずだ。

デフォルトで有効になっていることから、特にパソコン初心者、不慣れな方の中で「電源落としてるけど直らない」といった言葉はよく聞く。同じようなトラブルを抱えている方がいたら、ぜひ一度「高速スタートアップ」を無効にしてみることを強く推奨する。

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